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フォロワー数11万超 鉛筆が好きすぎてNYに店舗オープン オンラインと連動 日本メーカーも品揃えする

2019年02月09日

腕にある鉛筆の入れ墨を見せてポーズするキャロライン

NYにあるCWペンシルエンタープライズのお店

ニューヨークの鉛筆ショップを訪ねる

            取材・撮影/米国在住・藤井佐智氏


 子供の時から鉛筆が大好きだったキャロライン・ウィーバー氏は、2014年11月にオンラインビジネスを立ち上げ、2015年3月に小さな店をオープンし、昨年2017年10月に元の場所からそれほど遠くない現在のロケーションへ移った。

 ソーホーから歩くと20分ぐらいでチャイナタウンに近く人々の生活を肌に感じる場所にある。

 CWペンシルエンタープライズは、年商120万ドル、約250種類の鉛筆を取り揃え、鉛筆の歴史やストーリー、機能や特性などをわかりやすく紹介して販売する。鉛筆はどんなに技術が進歩しても決して時代遅れになることはなく、どんな用途に使うかによって各人の好みやコレクションにあった商品があるとキャロラインは語る。

 売り上げの中心はオンラインで店はネットビジネスがあるから成り立っている。ネットショップでの購入平均額は45ドル、顧客リストは約5万500あり、日本を含め海外からの注文も少なくなく、インターナショナルの注文は送料が高いため、まとめ買いが多く購入額が高くなるという。
 
   
●夢を実現した店

 キャロラインは近くのイーストビレッジに住んで、店は自分が生活する愛すべきネイバーフッドで近所の人に気軽に立ち寄ってもらう場所とのこと。賑やかな通りからすぐだが、自由に好きな鉛筆を試してゆっくりと快適な時間を過ごせる空間。

 トレンドやスタイルを意識したファッション性の高い場所でもなく、肩の力を抜いた普段っぽさを大切にしてる。店の広さは46㎡で1ドル以下の鉛筆も少なくなく店舗での顧客平均購入額は25ドル。オンラインショップが世界中何時何処からでもアクセスできるのに対して、小売店舗はキャロラインにとって生活の一部であり、夢を実現する場所。

 店の構想はかなり前からあって、支払いカウンターの代わりに、デザインにこだわって特注した長めの木製の机で、顧客と話したり鉛筆を紹介したりもする。白くて大きなテーブルはイベントデスクにもなり、棚や照明、試し書きをする机など顧客が心地よいと感じるスペースになるよう心掛けた。

 キャロラインは母親がインテリアデザイナーだったこともあり、子供の時から自分に合ったスペースをデザインするセンスを身に着け、ビジネスを引退したら、インテリアデザイナーとして活躍したいと語る。


●ユニークな商品を集める

 店にはトンボ鉛筆、三菱鉛筆、北星鉛筆、キャメル鉛筆をはじめ日本製品が少なくない。キャロラインは他の大型店で多数販売されているモノは敢えて扱わず手に入りにくい商品に的を絞っている。

 彼女が初めて手にした色鉛筆だったと語るスイスのカランダッシュは品数が多く、「CWペンシル」の名が入った商品もある。

 またデンマークブランドのバイキングとのコラボレーションで、CWペンシルエンタープライズのみで扱うギフト向け鉛筆3本セットも新製品。テネシー州の鉛筆業者の協力を得て1本から200本までの名入れサービスもある。 

 1本1本手に取って気に入った鉛筆のサンプルを実際に試し、世界各国の鉛筆を手にすると、鉛筆に対する興味が深まってくる。1ドル以下の鉛筆も多く、高くても大部分が10ドル以下で購入しやすい。ポルトガルやフランス、インドなど通常手にしないメーカーを知り、書き心地を試す機会にもなる。

 数あるコレクションの中からどの鉛筆を選ぶべきか、キャロラインや同じく鉛筆エキスパートであるスタッフが丁寧にアドバイスしてくれ、顧客は実際に試し書きをして自分に合った商品を見つける。キャロラインに話を聞いたのは平日の午後だったが、学生や観光客など2、3人ずつ続けて来店し、かなり長い間ショッピングを楽しんでいた。店内にはビンテージ商品も幾つかあり、アメリカの著名な作家たちが愛用した50年以上前のエバーハードファーバー社の“ブラックウィング”の95ドルが最も高い鉛筆だった。


●インスタフォロワー数が11万超

 店は積極的にイベントスペースとして利用され、所狭しと商品が並ぶ大きな中央のテーブルは、さっと片付けられて広いテーブルに長いベンチとセットでゆったりした作業スペースにもダイニングテーブルにも早変わりする。

 実際、昨晩はキャロラインがメンバーになっている“NYCレターライターソサエティー”で集まったとのこと。顧客向けにも“レターライターソシアル”(手紙を書くのが好きな人の会)や、スケッチを楽しむ会などを開いている。

 以前は年会費80ドルで会員に月に1本の鉛筆を届けるサービスを提供していたが、現在は3か月に1回、年会費120ドルの「ペンシル・ボックス」に変更した。四半期ごとにキャロラインが選んだ鉛筆がその価値に応じて数本箱入りで会員全員に届けられるが、少人数での発送作業は大変らしく、会員数は1200人に限られ、現在新規は募集していない。既存会員にキャンセルがあった時には新会員も受け付けるとのことだった。

 鉛筆を販売するウェブサイトは沢山あり競争は厳しいが、アマゾンや大手チェーンなど販売主のパーソナリティーが見えないビジネスや、自社製品中心のメーカーによるサイトが多い。 

 鉛筆コレクターのウェブサイトもあるが、CWペンシルエンタープライズは、一般の人々に鉛筆の良さを親しみやすくアピールし、鉛筆コレクターを育てている。インスタグラムには11万3千人のフォロワーがいて、鉛筆に関する情報が随時更新されるオンラインショップが顧客との接点を強化する。

 鉛筆に関するトピックに限らず、キャロラインがお勧めの本を紹介するオーチャード(店がある通りの名)リーディングクラブなど、彼女は気取らずに自分自身を前面に出す。その真摯さと鉛筆への愛情が、顧客を魅了し、鉛筆に関わる多くの人々を引き付け、新たなコラボレーションを生みだす原動力になっている。




【お店情報】

CW Pencil Enterprise
15 Orchard Street
New York, New York 10002
www.cwpencils.com


※月刊「Bungu to Jimuki」2019年1月号「アメリカ通信」掲載記事を転載しました

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