トンボ鉛筆(小川晃弘社長)は、5月25日、東京都北区の本社でプレス発表を行い、空気のような軽いタッチで修正テープのテープ走行を驚くほど軽くする新機構「エアータッチシステム」(特許出願中)を搭載した修正テープの新製品「MONO AIR(モノエアー)」(税抜250円)を6月8日から発売する。
成熟市場といわれている修正テープ。新機構は何がすごいのか。
□ 技術的には対立する2つの機構を利用 ■
プレス発表には、小川社長、広報宣伝室のほか、生産開発、商品開発、販売促進、営業の各部門責任者が勢揃いし、新開発にかける同社の意気込みを感じさせた。
「MONO AIR」のエアータッチシステムは、修正ヘッドを紙面に押し当てたり離したりする力を活用してテープ走行をコントロールする機構。使用時は「走行モード」、未使用時は「停止モード」に切り替わる。
より詳細に述べると、
?〇飜未暴だ汽悒奪匹¬あたるわずかな力(100gから駆動)を応用して供給リールのロックを解除する(左図の左)。
?▲悒奪匹鮖飜未?ら離すと供給リールはロックされテープ走行が停止する(左図の右)。
従来の修正テープはテープ引出力を重くして、紙面からヘッドを離したときのテープのたるみを防止していた。そのためテープ残量が残り少なくなって供給リールの径が小さくなるに連れて、テープ走行がどんどん重くなっていた。
「MONO AIR」のエアータッチシステムは、軽く引ける(軽い引出力)、テープがたるまない(重い引出力)という技術的には対立するユーザビリティを駆動する機構を利用して満足させた点に新規性がある。
□ 「今までの修正テープはなんだったのか」 ■
岸野保彦生産開発本部長は「開発に着手したのは、2年半前。当時は修正テープ用の使いやすいテープを作りたいと新コンセプトで臨んでいた」と振り返る。
梅山卓生産開発副センター長は「後半重くなり、力を入れないと走らせることができない、どことなく使いにくいのが今までの修正テープだった」とみていた。開発する中で、偶然2つの開発技術がほぼ同時に誕生する。梅山氏が「いくつかのイノベーションがスクラムを組んだ」と表現する、エアータッチシステムとトルク機構である。
その後は100以上の試作を繰り返し、量産品組み立てや設定変更を繰り返しすなど、数知れない努力を続け、今回の新製品発売に結びつけた。
亀井明憲商品開発本部長は、「金額ベースでの修正用品市場(修正液含む)はピーク時の95億5000万円から、直近で54億円と減っている。その要因として価格帯が150円~199円に集中するコモディティ化が進行している」と市場トレンドを解く。その中で、逆にトンボ鉛筆の修正テープシェアは拡大し、50%超という。「MONO AIR」の価格は市場トレンドを参考に250円(税抜)と設定された。ちなみに初年度販売計画の150万個という数字は修正テープでは異例のものだ。
発売前の消費者調査でも非常に好評だった。
フェイスブックでモニター1000名を募ったところ、約9000名が応募し、そのうち634名が使用した印象を投稿した。その内容も、「今までの修正テープはなんだったのか」、「くせになる」、「感動した」など、高い評価が多かった。
「発売から半年は重点的に『伝える』を継続する。ターゲットは女子高生、20代から30代の女性を狙う」(松本康裕販売促進部長)と、大規模な各種プロモーションも予定する。
工藤哲夫営業本部長は、流通向けに「MONO AIR」の説明会を開催したところ、「最初は修正テープはもういいよ、という意見もあった」と明かす。しかし実際に体感してもらったところ、「軽い」や「いいね」の声が続いたという。
8月9日~10日浅草橋の共和フォーラム、8月25日~26日には大阪OMMビルで開催する、秋の新製品発表会「トンボフェア」や見本市でも、一押しの商品となる。
□ 小川社長挨拶の要旨 □
「先日の日本筆記具工業会で説明した2015年筆記具(主要5品目)の前年比は109.2%、うち国内は105%といずれも好調な数字。昨今の文具業界は、少子高齢化、デジタル化の浸透など、逆風の状況。それにも関わらずに伸長しているのは、いろいろな要因があるが、最も大きいのは新製品が多数出ている点ではないか。日本のメーカーが品質を伴った新製品をたくさん出し、市場の活性化が行われている。今日発表する修正テープは筆記具ではないが、ジャンルでは筆記具の中に入っている。技術開発の成果が表れたので発表したい」。
「当社が修正テープを発売したのは25年前の1991年。既に市場に出回っている先行品よりもコンパクトにして、翌年には初めての人でも簡単に使いやすい横引きタイプを発売し、大きな普及を成し遂げることができた。現在の修正テープは性能は良いが成熟された商品として、もう開発する余地はないのではという声も聞く中、顧客の意見や要望を取り入れ、継続して開発に挑んできた。修正テープは最初は軽く、後半に重くなると言う課題があった。それを解決する技術を開発した。最初から最後まで軽いタッチであるエアータッチシステムである」。
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2016年05月26日
修正テープの進化技術「エアータッチシステム」とは トンボ鉛筆が開発
MONO AIR販売促進の各施策と小川社長
図の説明
■MONO AIRは全長64.5?个瞭阿?ロックアームを内蔵している。(a)
■修正ヘッドはアームの先端に位置し、支点を介して、一方は修正テープ供給リールの突起(b)に噛み合っている(ロック機構)。アームは金属バネによって軽量のトルクをかけロック状態を保っている。
■修正テープを修正箇所にあてる100g以上の力が加わると修正ヘッドは約0.5?仂緤?へ動く。
この動きが支点を介してロック機構に伝わり供給リールに噛み合っているロックを解除する。これまでにない軽い引出力でテープは走行する。
■修正を終え修正ヘッドを紙面から離すと供給リールはロック状態に戻る。修正テープの走行が停止しているためテープがたるむことはない。